猟師という言葉はちょっとかっこ良く聞こえるかもしれないけれども、まだ1年生のへっぽこ猟師。そんな自分が考えるお肉のことです。

鹿や猪を獲る。

最近毎日のように山を歩き回るけれど、猟師の営みって、超しんどいんですよね。

この前獲った60キロ超えくらいのイノシシを1時間くらいかけて引きずって帰ったときとか、最後の方、握力なくなるぜ、、、

だけどそれでも、猟を今後もずーっと続けたいと思っているのは、純粋に美味しいお肉が食べられるから!

獲って、解体して、お肉にして、食べる。その全ての過程を拘ってやろうってできるのは猟師ならではっすね!

鹿は去年だけでも150頭は捌いたし、猪は去年から通算なら20頭近くは解体したかな。

 

そんなふうに、冬の猟期中はほとんど毎日、いわゆる「ジビエ」と呼ばれるお肉たちに携わってます。

だからこそよく思うんですが、みなさん「ジビエって臭い!」って思ってません?





そんなことないですからね?

こういうお肉の話をしていると、なんだか独特な臭いがある…ってイメージを持っている人が多いように思います。

確かに、悪い臭いがするお肉もあるんですけど、それはズバリ「捕獲後の処理」に問題があったからに他なりません。

臭みを無くすためには、絶対にやらなくちゃいけない3つの処理があります。

血抜き

魚でも鶏でもそうですが、鹿でも猪でも、屠殺した後に血抜きをします。

血抜きの方法としては、首の脈を切るか、背骨の真裏にある、ホースみたいな太い大動脈を切り、流水に晒す、という方法をとってます。

鉄砲で撃った時に、たまたま大きな血管を撃ち抜いた、ということがなければ、脈が切った時に、ピューッと血が溢れてくるんですよね。

ただし、それは殺した直後の話。何かの理由で死んでだいぶ時間が経ったやつは、血が固まってしまって、そんなふうに血は出ないですね。

とにかく脈を切る、そして流水に晒す。溜水はダメですよ、抜けてきた血によって赤いプール付けてる状態になって、肉に変な臭いが付きやすくなります。

屠殺した鹿・猪には常に新しいキレイな水が当たり続けるような状態を維持するようにするのが血抜きのポイントです。

あ、この血抜きは内蔵を取り除いた後の話ですよ。

内蔵を抜く

屠殺した獣の内臓、特に胃袋とか腸あたりを放っておくと、肉が臭くなります。

走ってる獲物を撃ちました、その時お腹あたりを撃ちました、なんてことがあると、消化中の内容物が出てきちゃったりするので、そういうのはさっさと洗う、その原因となる腸とかもさっさと取るのが良いです。

横隔膜から下の臓器は、殺した後、なるべく早く取っちゃおう、ということですね。

横隔膜から上にある臓器は心臓、肺など。この段階では別に取らなくても良いです。特段、悪臭の原因にはならないです。肝臓も取らずにそのままでもOK!

ただし、横隔膜を切っておかないと、そこが密閉空間のようになってしまって、水がそこまで行き渡りません。

内蔵を抜いた段階で、忘れずに横隔膜は切っておきます。

「変に心臓とか肺とか肝臓とか、そういうの残すとかじゃなくて、全部すっからかんにしたら良いじゃん!!」なんて声も聞こえてきそうですが、「内臓を取りすぎない」というのも、美味しいお肉にするための大事なポイントです。

体内の内側の、臓器と接触しているところは、膜のようなものがあります。

この膜自体はとらないと臭い類のものなのですが、肉を汚さないバリアーになってくれます。

鹿撃ったりした時に、内臓損傷による内容物が付いたり、身体の中にちょっとした泥みたいなのが入ったり。

そういうのをできたら防ぎたいのですが、100%そうするっていうのは、正直なかなかできることではないのです。

じゃあどうするかって言ったら、もともと身体の中にあるバリアーを利用する。

猪だったら、内臓を出す時に、一緒に白い「内臓脂」も付いてきそうになるのですが、それは敢えて残すように処理します。

最終的には取るんですけど、解体直前までそれを残しておくことによって、肉に汚れが付きにくくなり、お掃除も簡単になるのです。

肉を冷やす

上記2点も大事だけど、「冷やす」というのもすっごい重要なポイントですね。

動物は殺した直後から、言ってしまえば「肉」になります。

ただし、先程まで生きていた動物であれば、当然まだ温かいですよね。

肉が、体温のような温度を保ち続けるとどうなると思いますか?

まあ、腐りますよね。

肉が温かい温度によって、ダメージを受け、腐敗へ向かっていくのを防ぐために、できるだけ早く冷やします。

冬なら内臓を出した後、お腹に雪を詰めたり、ぼくの場合は持って帰った後にすぐ山水に晒すし、たまーに鹿を獲りすぎて、桶に入らない場合は、目の前が川なので、しばしそこに浸けておいたりして冷やします。

「血抜き・内臓出し・冷やす」を迅速に!

というわけで、以上の3つの処理をどれだけ早く、丁寧にできるのか。

雪が降るような寒い中で、素手で冷たい山水や川でジャバジャバやらなきゃいけない時があって、「寒いのやだなぁ」なんて思うけど、それでも横着せず、妥協せずやろうと誓っているのは、美味しいお肉を食べたいから。

ぼくの職場は、こういうお肉を商品にしているけれど、お客さんに出すから、というのはもちろん、自分だって変な臭い肉じゃなくて、美味しいお肉が食べたいと思う。

獣を自ら獲り、自ら捌いて食べる猟師だからこそ、野生動物の商品価値をいかに高めるかを熟知するわけだし、丁寧な下処理のおかげで、旨みを残し、嫌な臭さは全く残さないこともできる。

美味しいお肉を食べるために、鉄砲なんて危ないもの持って、今日も山へ入るぜよ。